高強度焼結セラミックス系 ジルコニア- zirconia -

高強度焼結セラミックス系 ジルコニア

・ジルコニアとは

ジルコニアとはセラミックの一種です。ジルコニアは人工ダイヤモンドとしても大変有名ですが強く、軽く、美しく、そして体に優しいセラミックです。身近なところでは白いセラミック製の包丁などもジルコニアでできています。また医科では骨の代替素材として人工関節に使用されるなど生体親和性が高く、大変丈夫で安全なセラミックです。

歯科で使用されるジルコニア(ZrO2)はダイアモンド類似石として用いられるジルコン人造ダイアモンドと同じ元素で強さと美しさを持つ素材です。欧米ではホワイトメタル、白い金属とも言われています。

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歯科用セラミック材料に求められる要素は強度があり、美しく、安心できる素材であることです。ジルコニアは強度と靭性をもち耐久性、耐食性、耐熱性にも非常に優れ、美しく生態親和性も高く、金属アレルギーの心配もないことから金属材料に取って代わるノンメタル治療として最も注目されているセラミックなのです。

・ジルコニアセラミック修復物

セラミックは、圧縮する力に対しては抵抗を示しますが、衝撃を加えると簡単に壊れてしまういわゆる脆性材料です。そのため一部チッピングや破折を起こすことはよく知られていました。

ジルコニアはその弱点を改良していき、従来のセラミッククラウンよりも強度が圧倒的に高くなりました。そのため従来だったら、強い咬合力がかかり割れていた奥歯である大臼歯部や複数歯連結したブリッジなどにも使用範囲が大幅に広まりました。

・従来のセラミック修復物との違い

ジルコニア登場前までのセラミックは強度があまり強くなかったため、強い咬合力がかかる部位では、より強度を持たせるため金属合金や「アルミナ」というセラミック素材が用いられていました。

しかし金属は十分な強度はあるものの、歯ぐきの境目に黒く金属が見えたり、金属アレルギーが起こる可能性がありました。またアルミナは、金属を使用しない反面、強度不足という問題がありました。

新しいセラミック材質であるジルコニアは、金属のしなやかさと十分な強度の両方を兼ね備えているだけではなく、腐食にも強く、生体親和性が高いので、歯科治療における審美性の高い素材としても注目を集めています。

以下ジルコニアの特徴を述べていきます。

ジルコニアの特徴

・圧倒的に高い曲げ強さ

ジルコニアの特筆すべき特徴の一つが「曲げ強度」です。なぜ強くて、硬いと言われているかはこの「曲げ強度」が高いからです。他のセラミック材料であるハイブリッドセラミックが150〜240MPa、ガラスセラミックスの曲げ強度が160〜400MPaである一方、ジルコニアは曲げ強度1200±200MPaというように圧倒的に強度が高いのです。

例えるならば、竹のイメージに似ています。竹の木は触ると硬いですが、一方で「しなやか」にかかる抵抗力を吸収します。ジルコニアもミクロの結晶単位で「かかる力を分散し吸収する」という竹の木と同じような作用を起こしているのです。

 曲げ強度ビッカース硬さ
ハイブリットセラミック150〜240MPa80〜190MPa
ガラスセラミックス160〜400MPa640±20MPa
ジルコニア1200±200MPa1200〜1900MPa

・高強度の理由

ジルコニアが高強度の理由は、破壊の原因となる亀裂が生じたときに、亀裂の生じた部分のジルコニア結晶が正方晶から単斜晶へ相変態を起こし、それに伴い体積が約4%膨張することで亀裂の進展を防げる方向に応力が加わるためなのです。この特異なメカニズムを「応力誘起相変態強化機構」といいます。

このようにジルコニアは強度が高く、咬合力負担時にも歪みが少ないことから、クラウンから臼歯部のロングスパンブリッジに至るまで、幅広く応用することが可能となったのです。

・軽く、自然な噛み心地

ジルコニアは一般歯科治療で主に使用される金属に比べ、重量が約3分の1と軽量です。そのためロングスパンのブリッジをお口の中に入れた場合、金属ではかなりの重さになりますが、ジルコニアブリッジですと軽いため、違和感が無く自然な噛む力を回復してくれます。

12本ブリッジをジルコニアと金属で製作した場合の比較

 ジルコニアブリッジ金属ブリッジ差異
密度6.06g/㎤18.2g/㎤−12.14g/㎤
フレームの重量23.7g71.2g−47.5g
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・審美性

一般的な金属フレームのあるメタルボンドクラウンとは異なり、ジルコニアは白く、天然歯のように光の透過性があるため、見た目が大変美しく自然な歯を創り出してくれます。 金属修復物に見られる金属イオンの溶出による歯肉との境目部分の黒い変色もありません。ジルコニアでつくられるフレームは、イオン流出がほとんどなく、また白い材料のため歯肉を健全な状態に保ち、高い審美性を得ることができます。

・生体親和性

ジルコニアは人工関節としても使用されるほど生体親和性の高い、体に優しい材料です。お口の中に装着するものですから強度や美しさとともに高い安全性が求められます。この材料を歯科治療に使用すれば金属イオンの流出がないため、金属アレルギー、アトピー性皮膚炎の心配がなくなります。

・ジルコニアオールセラミッククラウンの特徴

長所
  • 非常に透明度が高い
  • 歯ぐきが明るく見える、金属特有のブラックマージンがない
  • 金属より硬く、割れない
  • 金属アレルギーが起こらない
  • 自然な噛みごこちで軽い(金属の1/3の軽さ)
  • 変色しない
  • 通常のセラミック処置より歯を削らずにすむ場合ある
  • 咬合力のかかる奥歯でも使用が可能である
短所
  • とても硬いので、装着後に問題が生じた場合、再治療が困難
  • CAD/CAMという技術で削りだすので複雑な形態の修復物は製作が困難
  • 接着をあげる場合、専用のセメントを使用しないといけない
  • ジルコニアフレーム自体は破折しないが、外側に貼り付けたセラミックは割れる場合がある
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